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感想
43億キロ先の孤独
43億キロ先の海王星を目指して旅を始めるロイですが、地球をスタートし、月、火星とアクシデントに見舞われながらも徐々に進んでいきます。
月の時点では、設備の充実した月面基地が登場し、そこにいる人間の数も多く、「宇宙の開拓が現代より進んでるんだなあ」と思って観ていました。
ところが、続く火星では基地もかなり質素になり、人間の数も激減します。
そして、そこから1人(正確には妨害してきたクルーをやっつけて)海王星へと向かい孤独に飛び立つわけですが、海王星には当然基地などありませんでした。
父親がかつて使用していた、壊れかけの宇宙ステーションがあるのみで、周りにはなにもありません。
地球から離れれば離れるほど、人も設備も減っていき、43億キロ先の海王星では、人もいなければ、音もなく、色もなく…。
そこにあるのは黒い宇宙と、真っ青な海王星と、父親との邂逅のみ。
圧倒的な孤独を感じさせられる環境に引き立てられた父子の再会は、まったく何も期待せずに油断して観ていた私の脳に、鮮やかに刻まれました。
あの静寂と、あの海王星の青が与える衝撃は、しばらく引きずりそうです。
名言「歴史が判断する」
ロイが火星から海王星へ向かい機内に乗り込んだ直後、ロイの精神異常を疑ってきたクルーに攻撃をされ、反撃して殺してしまいます。
そのときにロイは、その判断と行動が正しかったか、今は判断できないし、しないと決め、名言を残します。
「歴史が判断する」
鬼のような冷静さ。
父親に会ってみたいという私情が生まれているのはもちろんですが、人類の滅亡がかかっていることを考えると、サージの阻止ができることが最優先となります。
この行動が正しかったかどうかは、その結果次第で自ずと出るだろうということですね。
人生におけるさまざまな出来事も一緒で、そのときは「良い」「悪い」と思っていたことも、あとから評価が変わることはよくあります。
死の瞬間になるまで、結果論は語れないんですよね。
それはそうなんですが、人を殺してただ1人、宇宙の闇の中を父親探して飛行中の人間が、冷静にそう考えていたことに、畏怖の念を感じます。
父に投影される自分の未来
最終的にロイは父親と、海王星付近に停泊されていた、リマ計画の宇宙ステーションで再会することとなります。
父親と会話を交わす中で、彼が地球外生命体を見つけられなかったことをずっと悔やんでおり、まだ探そうとしていることを知ります。
仲間たちをすでに失っていた父親は、「おまえのような者がいれば…」と、ロイが協力してくれれば地球外生命体を見つけられるかもしれないと、まだ諦めていませんでした。
このシーンがロイの分岐点になったのだと思います。
父の背中を見て宇宙飛行士を志し、見事優秀な宇宙飛行士となったロイは、父親と同じく海王星までたどり着きました。
しかし、この父の姿を見たロイは、身近にある自分や家族、仲間といった大切なものをないがしろにし、存在するかわからない地球外生命体の探索にすべてを注いだ彼に哀れみを感じます。
「父のようになってはいけない」と、身近なものの大切さを実感したのではないでしょうか。
43億キロ先という、まったく「身近」ではない距離の先でこそ、身近なものの大切さを再認識するこのシーンが強調されたのではないかと思いました。
まとめ
いろんな登場人物のストーリーが複雑に絡み合うこともなく、基本的にロイの1人称で一方通行の旅を描き続けるシンプルな構成の作品でした。
シンプルなだけに、インパクトのあるシーン1つ1つが際立っていて、特に海王星にたどり着いてからのシーンがとても印象に残ります。
自分が宇宙に行くことはないのかもしれませんが、こうやって宇宙の旅を疑似体験できたことで、少し宇宙への興味も沸いたりもしました。
観ずに保留してた宇宙テーマの他作も、近々見てみようかな…。
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